SACDプレーヤをエソテリックにしてからの悪戦苦闘ぶりはSACDプレーヤのページに書いた通りですが、何故かスピーカケーブルについてはあまり疑っていませんでした。しかし、CD再生時の高域のシャリシャリ感がどうしても取れず、最後に残ったスピーカケーブルに疑問が残ることになりました。結論から言えば、どこか一箇所でもクオリティが劣るところがると、システム全体の音がそのレベルになってしまうということを思い知らされることになりました。
エソテリックの鋭い音に悩んでいた頃、インターコネクトにCARDASを使うことで、かなり改善された印象が強く、スピーカケーブルもインターコネクトで使っているCARDASのGolden
Presenseにしようかと考えていました。しかしその後電源ケーブルの交換、そして何よりもエージングの効果で、これ以上音を柔らかくすると、穏やか過ぎて物足りない音になるのではないかと思い始めていました。そんな思いを抱いて、どうせなら最適なものを選ぼうとテレオンに相談したところ、お勧めは金額的には1万円/m以上のものということで、aetのSCR
SP およびAudioquestのPikesPeakの2本を借りることにしました。期せずして国産と米国製となりました。
現用のSPケーブルはオーディオシステムのページに書いたように、スピーカを購入した時にテレオンのお勧めで試聴もせずに決めたCARDASのCrosslink
SP 1S。CDプレーヤーがデノンの時はそれほど気にならなかったのですが、そのクオリティの違いには唖然としてしまいました。どちらのケーブルが良いかの前に、今まで悩んでいたのは何だったのかというくらい、その差は歴然としたものがあります。まさに「音は金なり」で、値段の差を考えれば当然かも知れませんが、それだけシステム全体のクオリティが高くなっているということでしょう。
さて、借りてきたケーブルですが、aetのSCR SPはレンジも拡大、空間的広がりも広大で、目の前の視界がさっと広がるイメージです。いかにも国産と言う感じの音ですが、これだけ透明で歪み感のない音はまさに爽快そのものです。ただ、エソテリック、アキュフェーズの組み合わせには高域が目立ちすぎで、シャリつき感というより鋭さが耳につきます。このワイドレンジ感を持ったままで、高域をもう少し抑えたものはないかという相談はよく受けるそうですが、ないものねだりだそうです。バイオリンとピアノの両方が鳴らせるスピーカが存在しないのと同じことでしょう。
一方のAudioquestの方は伸びのある音で、しかも鋭いところはなく、実にしっとりした味わいの音が出ます。aetに比べると、レンジ感や空間的広がり感は少ないとはいえ、それがかえって落ち着きのある音として感じられるようです。Audioqestという名前は知っていましたが、その音は聞いたことが無く、自分にとっては新たなブランドの発見でした。それにしても、今まで気になっていた高域のざらつきや、音圧レベルが高い部分での詰まった感じが一掃されたことは、感激というより、まるでアンプやスピーカを代えた位の違いがあります。手持ちのCDを次々と聴き直すことは、通常システムが変わった時によくやることですが、たった1本のケーブルでそんな気にさせられたということで、その変貌振りがお分かりいただけるのではないかと思います
テレオンによれば、拙宅のシステムに一番お勧めのSPケーブはMIT(現在、国内販売中止)もしくはTransparentだそうですが、生憎アンプとスピーカの間にドアがあり、その間は床下を通すように設けたケーブルダクトが直径40mmくらいあるとはいえ、ケーブルの真ん中にあるブロック(MITはターミネータ、Transparentはネットワークと呼ばれるもの)は通りそうもなく、音を聴く以前にあきらめました。しかしAudioquestの音はそれを忘れさせるほどのもので、このシステムの良さを十分引き出しています。Audioquestのケーブルはそれぞれユニークな名前がついており、借りたPikesPeakというのはカウンタースパイラルという山の名前がついたシリーズの一番安いもので、最も高価なのはエベレストという銀を使ったケーブルです。価格=山の高さでわかり易いのですが、最近製品シリーズの見直しで、エベレストはK2に変りました。
シリーズ見直しで変らないのがVolcano、MontBlanc(いずれも生産中止)で、このあたりが候補と考えていたところ、オーディオユニオンでMontBlancの中古を見つけました。それも長さ3m、バイワイヤ仕様で見た目も良品で、ケーブルを借用したテレオンには申し訳なかったが、これぞチャンスと即決しました。おかげで定価(約26万円)の半分以下の価格で買えました。でも持ち帰ってよく見ると下の写真でもわかるように、ケーブルカバーのロゴの色が左右で違い、右側はカタログ通りの白ですが、左側が黒です。それに固定するロックねじが両方とも1個抜けていました。ロックねじの方は幸いM3でしたので、購入したものを短く加工して追加しましたが、ロゴマークはどうしようもありません。まあ音には影響しないし、まさか右と左と別々に買う人はいないでしょうから、恐らく購入時からと思われますが、いかにも米国製品らしく、国内ではあり得ないことでしょう。
(注)AudioquestのSPケーブルの音がすっかり気に入ってしまい、その後インターコネクトも購入しました。こちらは新品で買いましたが、今年発売になったリバーシリーズのCOLORADO(生産中止)で、同シリーズではミドルクラスのものです。このバランスケーブルのコネクタのロゴがSPケーブルと同様、黒と白になっていました。つまり、このロゴの色の違いは右と左を識別するためのもので、中古のゆえかと疑ったことが間違いであることがわかりました。
ちなみに、このインターコネクトの音は予想通りクリアかつ潤いのあるもので、狙い通りではありますが、一方でCARDSのとろみというか、陰影のある表現も捨てがたいところです。今のところ、CDプレーヤとプリアンプ間にCARDAS、プリアンプとパワーアンプの間にCOLORADOを使うと両者の良さが発揮できています。 (2007年11月追記)
MontBlancはヨーロッパアルプスの有名な山ですが、そのイメージなのか、ケーブルの被覆は写真のような輝きのあるブルーです。モンブランのイメージというより、その太さやきらきらした青から受ける印象はまるで青大将で、およそ気持ちの良いものではありません。それにAudiquest特有の誘電体バイアス・システムという、信号導体の周囲の絶縁体にバイアス電圧をかけるための電池を搭載しており(写真の黒い容器が電池)、よけいものものしい感じを与えます。このバイアス・システムは時間遅延の抑制、つまり最初からエージングをしたのと同じ状態を作り出すためのものですが、実際の効果のほどはわかりません。
MontBlancの音はPikesPeakと基本的な印象は変りませんが、より透明度が増し、ゆとりを感じさせます。PikesPeakの試聴で記したように、音質の感触についてはまさにアンプを代えた以上の変化で、逆に言えばそれまでのケーブルがアンプ本来の音をスポイルしていたということでしょう。では最初にSPケーブルを代えるべきではなかったのかという疑問が生じますが、それは結果論で、その場合はピンケーブルのレベルがシステムの音を劣化することになったのではないかと推察します。なによりもうれしいのは高域のざらつき感が消え、しっとりした音が得られたことです。
鳴らなかったCDが安心して聴けるようになった例はいくらでも挙げられますが、一例は1981年録音のショルティ指揮ロンドンフィルハーモニーのハイドン後期交響曲集。当時としてはめずらしくモダンなスタイルの演奏ですが、それでも最近の古楽器の演奏に比べればオーケストラの深々とした響きの楽しめるものです。そのオーケストラの弦の響きがこんなに潤いのある音だったのかと聞き惚れた次第。おなじく80年代初期の録音で、シノーポリのヴェルディ・オペラ序曲集。こちらはウィーンフィルですが、演奏のよさと相まって実に楽しめる1枚。こういったデジタル初期の録音は当時、アナログ録音と比べて音が冷たいと良く言われたもので、もちろんそういう傾向のCDもありますが、それ以上に当時のCDプレーヤの再生能力が追いついていなかったのがその原因ではないかと思います。
さて、ようやくCD再生の問題がクリアしたとはいえ、次はこれでどこまで満足できるかで、云ってみれば拙宅のシステムの能力が発揮できる最低限のレベルに達したに過ぎません。オーディオに於けるケーブルの楽しみは、システムの味付けやスパイスにあるわけで、その意味ではようやくスタートポイントに立ったというのが正しい言い方ではないかと思います。CDプレーヤをエソテリックに代えた時の可能性にかけるという意味は、まさに基本性能がしっかりしたものを選択するということであり、本当の使いこなしはこれからというところです。(2007年9月)
このHPを読んでくださるオーディオマニアへの情報量が最も少ないと自認しているのがこのケーブルのページです。巷のオーディオ雑誌にはケーブルをテーマにした専門誌があるくらい人気のアクセサリーですが、そもそも各機器の音を調整する手段として存在しているものですから、独立したテーマにならないのは当然です。たとえば導入以来手こずったCDプレーヤについては、そのケーブルの顛末も含めてデノンからエソテリックへのページに記載しました。この考えはオーディオに対する正しい姿勢と思っていますが、今更このページを各コンポーネントのページに移行するのも混乱を招きますし、そのうちケーブルを交換したくなることもあり得ることですので、このまま残すことにしました。
さて、前置きが長くなりましたが、先に引用したCDプレーヤのページで、CARDASのGolden Referenceを中古で購入したことを記載しました。中古というのはどういった使い方をされたか不明で、できれば避けたいのですが、CARDASのケーブルはとにかく高価で、とても新品を買う気になりません。そこでたまたま出ていた中古を買ったのですが、これが曲者で、まずピンの色が変色していて、さらに汚れがひどく、アルコールで数回こすってようやく綿棒に汚れがつかなくなりました。音もいわゆるくぐもった音で鮮度が悪く、CARDASのケーブルは長く使っていないと目覚めるまで時間がかかるという風説もあり、そんなものかなと思っておりました。確かに数日すると鮮度があがってきたようです。CARDASケーブルについては、実はCDプレーヤを購入した直後にGolden
Presenceを新品で購入しており、両者を比較すると、Golden Referenceの方がスケールが大きく、かつ落ち着いた音色となり、我が家のシステムには間違いなく合います。
そうなると、やっぱりGolden Referenceの新品を試したくなるわけですが、Yahooのオークションで新品が出展されており、調べてみると、予想通り並行輸入品でした。並行輸入品の信頼性はこれまた気になるところで、販売店などでは当然のことながら、品質の悪さに加え、まがい物が出回っていると、散々です。しかし考えてみれば、並行輸入品は米国のディーラーから購入しているわけで、米国内のオーディオマニアが販売店から購入するのとなんら変わらないわけです。まあ、日本の商社は独占販売権を持っているので、商社が知れば、ディーラーからの仕入れは差し止めになる危険はあり、その防御策として、シリアル番号などは削除されてきます。しかし、そういったことがある方が、かえって信頼性を感じるのも事実です。それにCARDASのまがい物は本当に存在するのか知りませんが、それだけの手間をかけてやるだけの儲けがあるか、はなはだ疑問です。そんな思いを抱きつつ、XLRケーブルとSPケーブルを購入しました。
左はGolen Referenceの写真ですが、並行輸入品といっても相当な値段で、ちょっとしたアンプが買える値段です。それでも購入に踏み切ったのは、ここに至るまで、オーディオシステムにおいていかにケーブルの役割が重要かを認識したからです。Golden Referenceの音は期待に応えてくれたのはもちろんですが、一番大きな違いは元々意図した高域の柔らかさよりも、音場の広大さでした。この広がりはマジックといっても良いくらいで、さすがCARDASと思わせるものです。本来ケーブルはパッシブな媒体で、アンプ以前の情報を正しく伝えることしかできないわけですから、これまでのケーブルはいかに本来持っている情報量をスポイルしていたかということでもあります。企業の宣伝文句にある、黄金比のなせる技なのでしょうか。
このGolden Referenceのスピーカコードですが、写真からわかるように、バイワイヤ仕様ですが、高域用と低域用でケーブルの太さが違います。もともと一本のケーブルを端末で分けていますが、このあたりはさすがケーブルの専門メーカと思わせる理にかなったやり方と思います。ケーブルは結局すべてCARDASとなり、かなりの投資となりましたが、当面は迷うことはないと思われ、そういった意味では比較的無駄な投資は少なかった思います。(2011年3月)
オーディオの楽しみは必ずしもテクノロジーの進化とは一致しないというのは良く知られた事実で、だからこそ、ヴィンテージスピーカや、アナログレコードの人気がいまだに健在ということなのでしょう。一方で、デジタル技術に代表されるテクノロジーの進化がオーディオに与える影響も大きく、それを久々にケーブルで実感することになりました。
そのケーブルの話題ですが、スピーカケーブルをCaldasのGolden Referenceに交換したのが2011年3月で、それ以来、下記のような構成で4年近く聴いてきました。
上記のブロック図で赤で示した、DG-48とA-60間のケーブルだけがGolden Presenceで、CDプレーヤをX-01 D2に交換した時に購入したものを使っています。Golden
Referenceに比べてややスケール感は劣るものの、明快さがあり、全てをGolden Referenceで統一するよりもメリハリがあって、かえって良い面もあるのではないかと思っておりました。
Caldasのケーブルは数年前に、このGoldenシリーズから、Clearシリーズという新しいシリーズに全面的に更新されました。このClearシリーズ、評判は良いようですが、相当な値上げで、ちょっと試してみたいものの、とても手が出ません。そんな中、2014年の9月に発売された「ケーブル大全」という雑誌を久々に買ってみました。その巻頭特別企画というのが新素材/新設計モデルで、遅ればせながら、PC-Triple C(連続結晶高純度無酸素銅)の存在を知ることになったわけです。これまでの代表格のPCOCC(単結晶状高純度無酸素銅)が生産中止になって、その代わりということで新規に開発されたケーブルですが、何とあの細い銅線を鍛造で作るそうで、当然のことながら単線です。まあ、そんな解説はどうでも良いのですが、このPC-Triple
Cという新しい素材を使ったケーブルが市場に出てきたことが話題となっています。その代表がアコースティック リバイブのXLR-1.0tripleC-FMと、SAECの電源ケーブルPL-7000です。
このケーブルはオーディオ業界でも話題になったようで、前述のケーブル大全の記事で、14人の評論家が推奨するマイベスト・ケーブルというのがありますが、何と全員がこのXLR-1.0tripleC-FMを推奨しています。恐らくこれは過去にはなかったことで、これは試さねばと、早速、試聴用のケーブルを借りてきました。その音ですが、評論家の絶賛するのも無理からぬ音で、一聴して伸びやかで透明感があり、しかも鋭いところはなく、音場が前後左右にすっと広がるのがわかります。
このケーブルのページで記載した、スピーカ−ケーブルを上位機種に代えた時に味わったのと同じ体験を久々に味わいました。さすがに評論家が絶賛するだけのことはあることはわかりましたが、価格も税込みで約20万と、国産ではとび抜けて高価です。このケーブルの特筆すべき点は、ワイドレンジな透明感と音の柔らかさが両立していることで、これならCardas主体のシステム構成に組み入れても問題ないはずと、試聴時と同様、先のブロック図でGolden Presenceのところ、つまりDG-48からA-60への最終段に使っています。前段のケーブルはすべて以前のままですが、ここを入れ替えるだけで、このケーブルの特質が十分発揮されています。これは推測に過ぎませんが、全部XLR-1.0tripleC-FMで統一するよりも、今まで馴染んだ音色が生かせ、良い結果が得られているのではないかと思っています。
(注)4年ぶりに手を加えてみると、過去の記事でリンクができないものが多くありました。すでに生産中止や代理店が存在しないものなどですが、このご時世にオーディオという、すでにガラパゴス化しつつある業界ですから止む無しと思いつつも、寂しいことです。(2015年1月)