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K-01 試聴

 エソテリックのCDプレーヤ X-01 D2を使い始めてすでに丸4年たちましたが、昨年の秋に新型のプレーヤK-01が発売されました。ステレオサウンドなど、オーディオ雑誌の評価は非常に高く、一度聞いてみたいと思っておりましたが、発売から半年近くたった、2011年3月にようやくデモ機を自宅で聞くことができました。実はそれに先だって、テレオンで聞いたのですが、この時には普段DG-48で補正したバランスに馴染んだ耳には、ハイ上がりのきつい音にしか聞こえず、プレーヤの違いはまったく聞き取ることができませんでした。その場にX-01 D2があれば、それなりの比較ができたかもしれませんが、それもかなわず、同じ環境で聞かないと意味がないということを確認しただけで終わりました。そこで、早速借用を申し込んだのですが、この高価なCDプレーヤは発売以来大人気だそうで、申し込んでから3ヶ月たってようやく自宅に届きました。ちなみに生産が注文に追いつかず、今発注しても入手は3ヶ月先だというから驚きです。

 さて、その音ですが、最初の音出しからX-01 D2との違いがすぐわかりました。最初に聴いた曲はクレーメルとアルゲリッチのベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第7番。1993年の録音ですが、グラモフォン特有の明確ですが、ともすれば高域のきつさが気になる録音です。その演奏は、ヴァイオリンとピアノが競い合っているかのようで、くつろいとかやすらぎとかはおよそ感じられません。それでもたまにはこういったアグレッシブな演奏も良いかとで保有していますが、あら探し的な試聴には好都合のソースです。

 X-01 D2との大きな違いは音のたたずまいで、音が鳴り出すというのではなく、演奏が始まるという表現がぴったりです。もう少し分析的にいえば、まずピアノの音、ヴァイオリンの音がともに滑らか。そして空間的な密度が高く、それも単に密度が濃くなるのではなく、直接音と間接音が分離し、間接音のみがさらに広がるという感じです。これが音のたたずまいが良いと一聴感じられる所以でしょう。ともかくクオリティの差は予想以上で、オーディオ雑誌での評価が高いのは納得できます。なによりも圧迫感がないのが最大の特徴で、こういったソースですと、音楽の印象がかなり違って聞こえます。


 二枚目はアーノンクールのハイドン・パリ交響曲集。その中の一つでマリー・アントワネットがお気に入りだったという、第85番。全体の印象はヴァイオリンソナタほど変わりませんが、弦と管との分離が良くなっています。演奏はウィーン・コンツェントゥス・ムジクスで、古楽器のオケですが、弦楽器が強奏時に張り出してくるのはX-01 D2と同様な傾向で、これはESOTERICの特徴かもしれません。
 オケでも音の表情が良くなっているのは感じられ、演奏者の存在を意識させられ、実体の伴った雰囲気が良く出ます。メカの音も小さくなったと言われていますが、それについてはX-01 D2も実用上問題のないレベルでしたので、あまり感じません。また中音域が充実しているため、ホルンとかバズーンがよく響きます。こういった楽器のメロデーがよく聞こえてくるという意味では確実に解像度が上がっています。とかくオーディオ機器を変えると、次々とCDを取り替えて聞いてみたくなるものですが、K-01ではそうではなく、同じCDをいつまでも聞いていたくなる。つまりそれだけ音楽が聞こえてくるということで、これはすばらしいことと思います。

 最後は同じハイドンの第48番。こうしてみると、改めてハイドンのシンフォニーが多いと思いますが、たまたま録音がアナログから最新録音まで幅が広いというのも一因です。このCDはスピーカのセッティングで紹介したものですが、ヴァイオリンの張り出しが強烈で、イコラーザーなしではちょっと聞くに耐えない録音です。そのヴァイオリンがどれだけ自然に聞こえるかですが、これはかなり抑えられているだけでなく、弦のきめが細かいので圧迫感がなく、この3枚のCDのなかで一番差の出たソースです。

 これまでの試聴は外部クロックなしですが、せっかくの機会なので、アンテロープのシグナルジェネレータをつないでみました。おそらくK-01自体の内部クロックも改善されているはずなので、さほど差はでないのではないかと思っていました。ところが、その差はX-01 D2以上かもしれません。まず奥行きが増し、低弦の音階がしっかりとし、そしてヴァイオリンの音の刺激的なところがまったく気にならなくなりました。これはハイドンの85番も同じで、差がさほどないと思っていましたが、シャリシャリした音になりがちな部分がしっとりしてきます。アンテロープも最近は随分と安くなったので、コストパフォーマンスは最高のアクセサリーでしょう。

 これですっかり出来上がった感じで、ソプラノを2枚聴いてみました。いずれもよく聞くCDで、このHPでもすでに登場した、ナタリー・ドーセのバッハ・アリア集と、もう一枚はパトリシア・プティボンのイタリア・バロック・アリア集。ところがこれらは期待したほど変化がなく、ちょっと意外でした。人の声というのは再生が難しい音源の一つで、それゆえに、より親しみやすい自然な声を聴けると思ったのですが、期待が大きすぎたのかもしれません。なにしろデモ機なので、追い込むまでに至らないのは致し方ありませんが、先の3枚であれほど違いを見せたにしてはちょっと不可解な印象でした。
 とはいえ、これだけのクオリティの違いを見せつけられると、買わずにいられませんが、今発注しても入手は3ヶ月先ですから、C-3800なども視聴したうえで判断することにしました。(2011年3月)